大船に乗ったつもりで親知らずを抜いたら、ガチャピンが登場した話（後編）

完全に、ロボットみたいな動きになっていた。 緊張のあまり、右手と右足が一緒に前に出てしまう。嫌な汗が背中を伝う。こんなに緊張したのは十数年前、結婚式のバージンロードを歩いたとき以来ではないだろうか。 「高橋さん、大丈夫ですか？」 顔面蒼白、能面みたいな無表情で診察台に座っている私の顔を、口腔外科医のF先生が心配そうに覗き込んでいる。 「ハイ、ダイジョウブデス」 片言の日本語で答える私。全然大丈夫そうではない。 今日、これから、私は右下の親知らずを抜く。 横向きに歯茎に埋まっている親知らずなので、割と難しい手術である。とは言え、まあまあよくある手術だ。 にもかかわらずこんなに緊