第1話 型にはまりたくなかったフリーランスが、お茶の“かたち”に魅入られた話

あたらしくなったCueで、私もあたらしいコラムを書かせてもらうことになりました。

「my story, your story」と題して、私自身や、あなたや、彼女の物語を紹介できたら・・・とおもっています。

第1話は、とにかく型にはまったことが苦手だった私が、ひょんなことからお茶を習い始めた話。

笑って読んでもらえたら嬉しいです。

そしてよかったら、いつか、あなたの物語も聞かせてください。

型にはまりたくなかったフリーランスが、お茶の"かたち"に魅入られた話 | Cue(キュー)

my story, your story 第1話「型にはまりたくなかったフリーランスが、お茶の"かたち"に魅入られた話」 型にはまったことが、とにかく苦手だった。 5歳のときから、「なんで幼稚園なんて行かなきゃならないの?」と思っていたし、毎日小学校に通わなければならないのも、耐えがたい苦痛だった。 学校を卒業して働き始めてからも、毎日同じ時間に、同じ場所へ行く生活が窮屈で、だからフリーランスになって、家で仕事ができるようになったことが「自由だーーー!!!」と全世界に向かって叫びたいくらい嬉しかった。 それなのに。 私は今、着物を着て、小さな畳の部屋に正座して、歩き方から手の上げ下ろしまで、一挙手一投足、型にはめられた状態で、一服のお茶を立てている。 いや。 型にはめられているんじゃない。 みずから望んで、型にはまっている。 そしてそのことに、うっとりするような心地よさすら感じている。なぜだ? 何がどうしてこんなことになった?? きっかけは半年前、久しぶりに子どもを連れて、実家に帰ったことだった。 ♪ 実家の押し入れから子どもの布団を出そうとして、奥の方に積み上げてある桐の箱が目にとまった。 「ああ、お母さんの着物。しばらく着てないね」 何の気なしに、私は言った。 「そうだねえ。もう着ることもないかもね」 母は少し寂しそうだった。 母が結婚するとき、もう40年も前につくった色とりどりの着物。私や妹が、成人式や卒業式など、特別なときに2、3回着たきり、ずっと同じ場所で眠り続けている。 「そうだ、私、卒園式で着ようかな。オレンジの紋付き、あったよね?」 ちょうどそのころ、今年小学生になる長男の、保育園の卒園式で着るスーツを探していた。せっかくここに着物があるんだから、それを着ればスーツを新調しなくてすむ、というくらいの、軽い気持ちだった。 「えー、本当に? もう古い着物だから、傷んでいるかもよ」 母と一緒に桐箱を引っ張り出して、開けてみた。防虫剤の懐かしいような匂いがぷんと鼻をつく。 橙色の着物は、鮮やかな色合いを保ったまま、たとう紙にくるまれて、静かに私たちを待っていた。 「わあ。きれい。ねえお母さん、私これ着たい。借りてもいい?」

Cue[キュー] ー きっかけは、彼女の生き方。

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