コップのふちまでギリギリいっぱい

「時々思うんだよ。家族って、ふちまでギリギリいっぱい水を満たしたコップみたいだなって」

Yさんは、少し困ったようなほほ笑みを浮かべて私に言った。

15年前、私が勤めていた会社の上司だった人だ。定年退職を間近に控えていた。退職後は、好きな映画を見て、家族とゆっくり過ごすのだと語っていた矢先、病気が見つかった。かなり進行していて、手術も難しいということだった。

Yさんには、障害を持つお子さんがいた。Yさんに何かあれば、奥様がたったひとりで、さまざまな重荷を背負うことになる。当時まだ20代半ばだった私は、そんなYさんにかける言葉を見つけられずにいた。

(つづきは↓)


0コメント

  • 1000 / 1000