都会暮らしに息が詰まりそうになったとき

最後に立ち止まって空を見上げたのはいつですか?


緑の匂いのする風を思い切り吸い込みたくなったときにおすすめしたいのが、こちらの一冊。

アンサリー『森の診療所』。

アンサリーさんは、シンガーでお医者さん。

ふたりの女の子のお母さんでもある。

透明感のある涼やかな歌声そのままに、本書に収められたエッセイも、コップに満たした甘い湧き水のように、じんわり体に染み込んでくる。


子どもたちが野山を駆け回れる環境をもとめて、山のそばに引っ越したというアンサリーさんの、自然と共にある暮らし。

病院で働き、週末は歌をうたい、子どもがふたりいるなんてどんなにか忙しいだろう…という想像とはうらはらに、彼女を取り巻く時間の流れはとてもゆったりしている。


することがたくさんあるから忙しいんじゃない。情報に埋もれて、自分の内側の心地よいリズムを忘れているから慌ただしく感じるんだな。


長男が生まれる前、雪国に住んでいたころ、散歩中に出会った見知らぬ花の名前を調べるのが楽しみだった。

都会暮らしで忘れかけていた大事なこと、この本に思い出させてもらったみたい。


「子供という存在もまさに自然そのもの」という記述にも、はっとした。

森を歩くとき、次の予定を気にしながら、うつむいて大急ぎで歩く人は、あまりいない。

鳥の声や川のせせらぎ、香ばしい木の香り、木漏れ日が作り出す模様。

五感をいっぱいに使って森を感じながら、ゆっくり歩きたいと思うはず。


子どもと接することも、たぶん同じなのだ。

「汚れるからだめ」「早くして」「ちょっと待ってね」

口ぐせのように繰り返すたび、大切な贈りものを、指のあいだから取りこぼしていたのかもしれない。


遠くの雄大な自然に憧れるのもいいけれど、まずはいちばん身近にある小さな自然、子どもとの時間を抱きしめることから始めよう。


エッセイと一緒に届いた同じタイトルのCD『森の診療所』の、やさしく、どこかなつかしい歌声を聴きながら、そんなことを思った。


CDの情報はこちら↓

「おおかみこどもの雨と雪」主題歌「おかあさんの唄」、

「満月の夕」、小田急ロマンスカーのCMソングなど盛りだくさんの内容で、ファン必聴!

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