働く「じぶん」に自信が持てないとき

吉田篤弘『つむじ風食堂と僕』読む。

『つむじ風食堂の夜』、

『それからはスープのことばかり考えて暮らした』、

電子書籍『レインコートを着た犬』に続く、月舟町の物語、番外編。


今度の主人公は、サンドイッチ店「3(トロワ)」店主の息子、12歳のリツくん。

彼が路面電車に乗って、月舟町のつむじ風食堂に通い、大人たちに問いかける。


「あなたは、どんな仕事をしているんですか?」


なんでも売っている文房具屋さん。

救急病院の当直医の心意気で、コンビニで働くお兄さん。

オレンジ色にひかれた果物屋さん。


吉田篤弘さんの描く「働く大人」は、とても魅力的。

何がかっこいいって、ぜんぜんバランスがとれていないところがいい。

バランスをとろうなんて、はなから思ってもいない。

宇宙の片隅に自分の場所を見つけて、そこで自分にできることを、淡々と黙々と、時にはこだわりを持って、うんと偏りながらつづけている。

働くことって、つまるところ居心地のいいかたちに「偏る」ことなんじゃないかと思うくらい。


つむじ風食堂でリツくんに出会ったら、今の自分に何が言えるだろう、と考えてみる。

それはつまり、息子たちに、働くということについて何が言えるか、ということでもあるんだけど。


この本をひらく前なら、きっと、お母さんになる前に経験した会社勤めについて話していたかもしれない。

でも今は、「お母さん」という仕事について、それから、お母さんになったことで書けるようになった物語について、ちょっと背すじを伸ばして、クロケット定食を食べながら語ってみたい気持ち。


さて。


あなたは、どんな仕事をしていますか。

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