2分間で人生が変わる魔法の習慣

「プロテイン」なんて、自分には生涯縁のないものだと思っていた。

子どもの頃から本が友達。学校で一番好きな場所は図書室だった。日差しの下、校庭を走り回る運動部の人たちを見て、「青春だなあ」と目を細めるものの、所詮他人ごと。私が「あちら側」の世界の住人になることはおそらくないだろう。

しかし、人間は自分にないものを持っている人に惹かれるらしい。

大人になって結婚した相手は体育会系で、「悩んだり、ストレスが溜まったりしたらとりあえず走る。それでも駄目なら寝る」というポリシーの持ち主だった。

走ると苦しいし、疲れるし汗をかいて気持ち悪い。それがどうしてストレス解消になるのか、結婚当初、私にはまったく理解できなかった。

夫を見ていると、ひとしきり走った後、何やら粉の入った袋を開けて水に溶かし、飲んでいるようだった。

「それ、何?」

「プロテイン」

夫の説明によると、タンパク質が豊富に含まれ、運動後に摂取することで効果が高まるらしい。

「へえ。そうなんだ……」

説明を聞きながら、私の頭には、ボディビルの大会で筋肉を披露する人々の姿が浮かんでいた。元文学少女には無縁の世界だ。

自分と違うものを愛する夫の価値観を尊重しつつも、私は「プロテイン」と筋肉にまつわる情報を心の一番奥の引き出しにしまい、そっと鍵をかけて封印した。

(つづきは↓)

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