訪れたことがないはずの場所なのに、「あ、この場所知っている」と思うことがある。 たとえば、与謝野晶子のこんな歌。 いさり火は身も世も無げに瞬きぬ陸は海より悲しきものを 情熱的できらびやかな作品が多い与謝野晶子の歌の中ではあまり目立たない、どこか寂しい印象の歌なのだけれど、十年以上前、初めてこの歌に出会ったときから、どうにも「この場所を知っている」という不思議な懐かしさを止められない。 海辺の小さな旅館で、窓辺に腰かけて見るともなく漁火に目をやっているこの女性を、私は確かに知っている。 いったいどこからやってきた記憶なのだろうとずっと不思議に思っていたのだが、昨夜、突然その謎
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