夏への扉を開けて
「(猫のピートは、家の中に11ある)ドアの、少なくともどれか一つが、夏に通じているという固い信念を持っていたのである」
タイムトラベル小説の名作、ロバート・A・ハインライン『夏への扉』(ハヤカワ文庫)の一節。
日本ではとても人気がある小説で、キャラメルボックスが舞台化しているし、山﨑賢人主演の映画が間もなく封切られる。
「夏至」と聞くとなぜか、この小説のことを思い出し、毎年読み返すので、私の夏への扉は写真のようにボロボロになった。
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さて、今日は夏至である。
北半球では、1年で一番昼の時間が長い日だという。
暑さがピークに達したわけでもなく、梅雨と重なって雨が降ることも多いこの時期に、日照時間が一番長いというのは、何だか損したような、騙されたような気持ちだ。
けれど、同時に、これからやってくる夏への期待が胸のうちでほんのりとふくらみ始める、予感に満ちた季節でもある。
(だから夏への「扉」に結びつくのだと、書きながら気がついた)
外国では、夏至の日に魔法にかかった男女が恋に落ちるなんていう伝承もあるようで、生きとし生けるものたちの生命力が高まり、胸ときめく季節なのだろう。
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私自身は、夏至だからといって特別なことをする予定はなかったのだけれど、あるプロジェクトのキックオフミーティングが、偶然スケジュールされていた。
ふたを開けてみたら、驚くほど心地よく、語られる言葉も本質的で、その場所にいられることがただただ幸せに感じられるような素晴らしい集まりで、「夏至の魔法」という言葉が思わず脳裏をよぎった。
今日1日の出来事が、これから始まる夏の高鳴りを象徴しているのだとしたら、今年の夏は史上最高に熱くなりそうだ。
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